新型コロナウイルスは多くの社会問題を引き起こしている。コロナ倒産にコロナ離婚、コロナ鬱などさまざま。その一つに、あまり知られていないが、離婚で子供と離れて暮らすことになった親の面会問題がある。事前に決めていた面会機会が、コロナを理由に元配偶者から「子供とは会わせられない」と断られるケースが起きているという。
ツイッターでは「コロナで子供との面会を一方的に中止にされた」「コロナの影響で面会交流できなくなりました」という趣旨のつぶやきが複数見られる。
永田町関係者は「法務省も問題視していて、ホームページでビデオ電話やメールという代わりの方法があることや、父親と母親で面会方法の打ち合わせができないなら、弁護士に相談することを勧めています」と指摘。実は困っている人は多いのだ。
「子供に会わせないのは感染が怖いからというのもあるでしょうが、単純に会わせたくないのでしょう。経験者なので分かります」と話すのは、約10年間も元妻から子供と面会をさせてもらえないアラフィフ男性だ。
「私が子供と会えなくなったのは、ちょうど東日本大震災の後でした。当時、元妻からは『震災でいろいろ混乱しているから』と面会を断られ、以後、そのまま会えずにいます」
社会状況が面会拒否の口実に使われるのは、今も昔も変わらない。
法務省の指摘のように、今ならオンライン面会という手もあるが、そう簡単にもいかないのが現状だ。
男性は「そもそも元配偶者側にコミュニケーションを取る意思がないとどうしようもない。私の場合、元妻は普段から電話にも出てくれませんから」と言う。そんな関係では、無理やり会いに行っても事態が悪化しかねない。
コロナを理由に子供との面会ができずに苦しんでいる人はどうすればいいのか。
男性は「弁護士からのアドバイスで私がやっているのは、定期的に元妻と子供に手紙を送ることです」と指摘。「会わせてほしい」「会いたい」という内容で、送る際はコピーを取っておく。送る際は普通郵便ではなく、内容証明郵便や簡易書留にするとより良いという。
「手紙を送ることで子供のことを忘れていないとアピールすることが大事です。今後、家裁で面会の調停があったときに、何もしてないと『あなた、子供のことずっと放っておきましたよね』と言われてしまいます」(男性)
コピーを取っておいたり、内容証明郵便にするなどの対策は、元配偶者側に「そんな手紙知らない」と言わせないために必要なのだ。
しかし、まだ面会は実現していない。八方ふさがりの男性が期待しているのが離婚後の共同親権だ。日本では離婚すると父母どちらかの単独親権になってしまうが、離婚後も共同親権にしようという動きがある。
「今は子供を連れ去った方の勝ちなんです。裁判所は現状を追認しがちなので、連れ去った方の親権を認めてしまう」(男性)法務省は昨年9月、共同親権制度の研究会を立ち上げ、議論をスタートさせた。
さらに同年11月には「離婚後は父母どちらか一方にしか子供の親権を認めない民法の単独親権規定は法の下の平等に反し違憲だ」などとして、男女12人が国に総額1200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、審理中だ。
だが、国側は「原告側の養育機会が阻まれているのは(子供と同居する)親の意向によるものと思われ、国に賠償請求する根拠が不明」と争う姿勢を示している。このため、共同親権制度の導入にはまだ時間がかかると見込まれている。
コロナ禍の今でもできることは、子供に会いたいという意思をしっかりとアピールすることだろう。