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新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言で、家裁での面会交流や引き渡しをめぐる審理が中断し、親が別居中の子供に会えないケースが相次いでいる。法務省はビデオ通話での親子の交流継続を呼びかけるが、当事者団体は「オンライン交流は代替手段にすぎない」として、対面での面会に向けた具体的な指針を国や裁判所に要望している。(桑村朋) 「このまま子供に会えないかもしれない。一体どうすれば」 4月下旬、北陸地方に住む30代のシングルマザーが電話取材に訴えた。離婚して地元に戻ったが、実家とは別の家に暮らす。昔から両親とは仲が悪く、長年顔を合わせていなかったが、今年、単独親権を持つ小学生の子供が実家に行ったきり帰らなくなった。 このため女性は実家側に子供の引き渡しを求め、地元の家裁に調停を申し立てた。調停は家裁の調停委員が間に入り、子供の引き渡しや住む場所について話し合いでの解決を目指すというもの。4月21日には最初の協議が予定されていた。 だが同月8日、家裁の担当者から「新型コロナの影響で調停は電話で行う」と連絡があった。政府が先行の7都府県に緊急事態宣言を出したタイミングと重なった。その後、女性が住む自治体でも感染者は増加。期日直前には家裁から改めて連絡があり、今度は「(期日は)5月6日以降に決め直す」と告げられた。 だが、8日時点でも家裁から連絡はない。女性は悲痛な胸の内を明かす。「このまま夏休みまで会えない可能性もある。体調管理をしてあげたいこの時期に一緒にいられずつらい」 ◇7割、審理期日未定 「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」がまとめたアンケート結果によると、面会交流や離婚、子供の引き渡しなどを家裁で審理中の94人のうち、約7割の66人が、取り消しや延期で、次回の審理期日が決まっていないと答えた。 また56人が、子供に会うことができずに困っていると回答。「子供の安否が確認できない」(38人)、「相手方と連絡を取ることができない」(19人)といった意見もあった。「コロナを口実に面会交流を引き延ばされている」など、自由記述欄には切実な声も。 同会は4月末、アンケート結果を基に、家裁審理の早期再開を求める要望書を最高裁に提出。最高裁は緊急性の高い裁判は継続審理する考えだが、8日時点で新型コロナ禍での面会交流の指針は未公表だ。 一方、法務省は1日、面会交流が困難な親子らに向け、ビデオ通話で交流継続を呼びかける方針をホームページに公表。だが同会担当者は「あくまで重要なのは対面の面会。ビデオ通話が主流になれば、片親が今以上に会えなくなる恐れもある」と警鐘を鳴らす。 海外では都市封鎖(ロックダウン)中も面会交流できるよう行政が指針を出す国もあると指摘。「オンライン交流なども選択肢として確保すべきだが、自宅待機中でも子供が双方の親の家に移動できるようにするなど、国や裁判所には具体的な指針を出してほしい」と訴えた。