慎重な議論の行き着く先

慎重な弁護士のデマ

 

コロナパニックで傍聴席は間引かれたものの、3月12日に共同親権訴訟の第一回口頭弁論が開かれた。ぼくはこの訴訟の原告なので、この日、冒頭意見陳述をした。一方で2月28日には、「シングルマザー」のグループは、「慎重な議論」を求める署名を1万人分集めて提出している。記者クラブの雰囲気が若干共同親権に「慎重」になった、と感想を述べた記者もいるので、効果はあったようだ。

この記者会見では、こういうデマを相変わらず弁護士たちは述べていたようだ。

「これについて離婚に詳しい弁護士からは『程度(時間や頻度)の問題はあるが、面会交流はほぼ実現している。現在、裁判所によって、面会を制限されることは、そうせざるを得ない事情が認定された、例外的な措置』との指摘もある。」(弁護士ドットコム)

何度も言うけど、家庭裁判所に面会交流を申し立てた場合の取り決め率はここ数年55%くらいで、4割が取り決めを守ってもらえていない。「ほぼ実現している」がどの程度の割合か教えてほしいものだ。この署名はデマに基づいて集められたのだろうか。

 

同居シングルマザー全国団体

 

赤石さんもがんばるなあ、と思うけど、今度は「シングルマザーサポート団体全国協議会」というのを作ったようだ。名前は正確に「同居シングルマザーサポート団体全国協議会」にしたほうがいい。別居親もシングルペアレントなのだけれど、多分赤石さんのグループには入れないだろう。「シングルマザーじゃないから」と入会を断られた別居母もいる。この辺は差別そのもの。

「がんばるなあ」と思うのは、以前も「ハーグ慎重の会」とかで上野千鶴子やら戒能民江やらの有名どころを集めて活動していたグループがあったからだ。

「なんだよシンチョーって」とそのころ別居シングルファーザーたちで悪態をついたものだ。「反対」と言えば対案を求められる。それはできそうにないから「慎重」になる。今回も同じパターン。実際はハーグ条約の加盟を阻止するために最大限がんばっていた。

共同親権訴訟で国側は「子どもを会わせないのは同居親の問題で、国に責任はない」と主張していた。子どもに会えなくなった当事者としては無責任な主張だと思うけど、「会わせない」ことがよくない、ということは国は理解しているようだ。「たいしたことない」と言いたいらしい。(避難だから)「連れ去りと言わないでほしい」という主張もある。こういう理屈は、「心の平衡を保つために喫煙は必要だから、受動喫煙と言わないでほしい」という主張とどう違うのだろう。

ハーグ条約加盟反対運動で何がされたかというと、体の大きい外国人は怖い、と最大限の人種差別がキャンペーンでなされて、それはないよなあと思ったものだ。それで加盟やむなしのハーグ条約実施のための国内法では、DVや虐待のおそれがある場合において「特別な配慮」がなされることが目的にされ、実際そういう条文がある。

親子断絶防止法(共同養育支援法)でも同じような運動があって、法案が修正されて、DVや虐待のおそれがある場合には「特別な配慮」がなされ、そういった場合には関係断絶もありうるべきことが修正案に盛り込まれ、ぼくたちは反対した。「おそれ」を判断するのは結局のところ同居シングルペアレントになるからだ。以前赤石さんにインタビューされたとき、危険な場合はどうするの、と聞かれて「じゃあそれ誰が判断するんですか」と聞くと黙っていたので、図星だろう。

 

差別条項を挿入させろ

 

「骨抜き」という批判がなされているけどそうでなはない。これは別居親差別条項なので、そのような法案を積極拒否したにすぎない。ばかばかしいことに、別居シングルペアレントたちの多くは、自分たちが差別される法案を一生懸命作ろうとしていた。もし法案化されていたら、この差別条項を撤廃するために、また何年もかかっただろう。成立しなくてほんとによかった。

お気づきのように、共同親権「シンチョー」の議論でも、この差別条項の明文化がおそらく目的とされるだろう。先だって、訴訟のグループに取材依頼があった。フリーランスの記者だったけど、電話で問い合わせることもなく、質問項目と自分のサイトのURLだけを書いて一週間以内に回答をよこせ、というメールが送られてきた。同業者としてはずいぶんな仕事の仕方だなと思い、電話よこしたら回答すると答えたら、電話してきた。

「私は中立」と言いつつ、「会のホームページを読んでも虐待の場合とか、子どもの視点からの記述がなく、それを書いていないと賛同が得られないんじゃないか」と一生懸命話していた。被害を受けている人が別にいるから手立てを考えないと賛同できない、という主張は要するに「あなたたち加害者でしょ」ということになる。虐待の加害者は母親が多いですよ、と言うと黙っていた。「こうやって話したらわかるけど、書いていないから誤解を受ける」というけど、だったら最初から電話すればいいのに。

質問の仕方も思い込みが大きいのだけど、こういう問いがあった。「現行法では、子どもは親権者の良心にのみ期待するしかなく、子どもは自分の進路すら親と交渉して勝ち取らなければならないものになっています。その交渉相手が離婚後も2人のままだと、子どもは交渉に2倍の労力がかかり続け、両親の意見が異なれば、その争いに巻き込まれて悩み苦しむことになります。このように子どもが苦しまないようにするために、離婚後の共同親権を成立させる際に、どんな付帯条項をつけるつもりですか?」
自分たちが二級市民だという差別条項を設けないと、立法活動は認めがたいという主張にはこう答えた。
「それは婚姻中の共同親権においても同じことですので、もしこういった付帯条項の必要性があるというなら、戦前のように婚姻中も単独親権にするのが一番いいのではないでしょうか。なお、子どもの福祉の観点と男女平等の観点から、戦前の単独親権制度は戦後は婚姻中においてのみ共同親権になっています。共同親権が子どものためにいいからです。婚姻外の共同親権に付帯条項が必要と考えるのは、別居親は養育にかかわるのは望ましくないという偏見に基づくものです。」

(宗像 充 2020.03.16)

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