「なぜ、子供に会えないんだ」豪州サッカー記者が子供を連れ去られ“全て”を失うまで

妻とともに11歳の長女と7歳の長男が突然、自宅から姿を消した

 日本で活動するオーストラリア人のサッカージャーナリスト、スコット・マッキンタイヤ氏が、“魂の訴え”を続けている。今年1月に日本外国特派員協会で会見を行うと、メディアの取材に次々と応じているのだ。取材する立場だったはずの彼に一体、何が起こったのか。単独親権制度を取る日本の司法について、大きな疑問を持っているという。

スコット氏に“悲劇”が襲ったのは昨年5月。11歳の長女と7歳の長男が突然、日本人の妻とともに自宅から姿を消した。さらに、妻サイドからは一方的に離婚を切り出された。以後、1度も子供たちと会うことはなく、どこに住んでいるかも、どこの学校に通っているかもわからないという。スコット氏はこう説明する。

「9か月間、一度も子供と会っていません。家を出て行った日に学校も転校して、携帯電話やメールアドレスも変えられてしまった。その後、離婚に関する調停が始まったのですが、最初の2、3回は、妻どころかその弁護士も裁判所に現れませんでした。しかも、調停が行われるのが2か月に1回。この状況で、どうやって、子どもと会えばいいのか。なぜ、なぜ、なぜ、です」

単独親権制度を取る日本では、離婚をする際、片方の親だけに親権を与えるという先進国では極めてまれな制度を採用している。どちらの親にするかを決めないといけないため、夫婦の間では激しい争いが起こる。

現状では、先に子供を家から連れ出し、“監護”状態に置いた親に親権を与えるというケースがほとんどだ。そのため、離婚を決めた親は、我先にと子供を連れ出し別の場所に移り住む。

夫婦間で対立感情が強ければ、連れ去ったほうの親が、子供と残された親を会わせないようにすることは珍しくない。スコット氏はこうした現状をTシャツに“片親誘拐”と書いて、その理不尽さを訴えている。

「調停で『子供たちに会いたい』と訴えても、奥さんが『無理』『子供たちが会いたくないと言っている』と言って、会えないというんです。私にはどうすることもできない。警察に行っても『何もできません』と言うだけです。日本は北朝鮮による日本人拉致を批判する立場にあるが、実は日本でもそれが行われているんです」

子供を探し求め住居侵入罪で逮捕「何もかも終わった」

 子供たちはどこにいるのか。スコット氏は昨年12月に子供を探し求め、妻の両親のマンションの共有スペースに入ったのだが、住居侵入罪で逮捕されてしまう。44日間も勾留され、今年1月には懲役6か月、執行猶予3年の有罪判決まで言い渡された。

スコット氏から、別居直前の子供たちとの写真や動画を見せてもらったが、仲良く遊ぶ姿が映されていた。毎日、子供たちをサッカー、水泳、塾に連れて行ったりもしていたという。

「直前まで楽しい思い出があって、突然、『パパと会いたくない』というのはおかしい。“誘拐される”前、オーストラリアのいとこは、毎週フェイスタイムやスカイプで長女と話していて、本当に仲が良かった。いとこは今でも長女と『話したい』『メールしたい』と言っています」

拘置所にいる間に、自宅からものはすべてなくなり、マンションの契約もキャンセルされていた。勾留後はカプセルホテルや友達の家で過ごすことに。服は友達からプレゼントされたものを着ている。別居後、5キロもやせた。一番大切だった子供たちとの思い出が詰まった品も、どこにあるのかわからない。唯一の救いはスマホに残っていた子供たちとの写真や動画だ。

「“誘拐された”日に何もかも終わった。人生変わちゃった。ずっと会えないかもしれない。本当に将来は真っ暗」

スコット氏が子供と会える日は来るのか。

ENCOUNT編集部

5年前