大きく後れを取る日本の養育費制度、海外では給与から天引き徴収も

「こんなひどい国は先進国で日本だけ」――これは、養育費の未払い問題に関する兵庫県明石市の泉房穂市長の発言だ。日本では母子家庭で養育費を受け取っている割合は24.3%に過ぎない現実がある(厚生労働省『平成28年度全国ひとり親世帯等調査』より)。

 だが、16年ぶりに最高裁判所が養育費算定表を改定、新算定表では増額傾向となり、また、自治体が回収代行や公文書作成費用補償などの支援開始を準備始めた例もある。明石市もそうだ。はたして日本は「ひどい」のか。確かにOECD(経済協力開発機構)の調べによると、日本のひとり親世帯の相対性貧困率は54.6%と、先進国の中では群を抜いて高い。

 アメリカ、イギリス、オーストラリアでは養育費を給与から天引きして強制的に徴収するほか、フランスやスウェーデンでは国が立て替えている。韓国では、受取率が17%くらいしかなかったのが、2015年3月からアジア初の養育費確保の支援機関ができて、養育費回収率が33%程度にまで上がった。

 滞納した場合は、不払い者の運転免許の停止やパスポートの停止など、厳しいペナルティーが待っている。なかでもアメリカでは不払いの親がピザを注文した場合、宅配されたピザの箱に顔写真付きで「養育費を払いなさい」と書かれた紙が貼られることもあり、韓国では「バッドファーザーズ」として、不払いの親の身元をネット公開することが“公益のため”とされているほど。

「養育費も面会交流も子供の権利だという意識が徹底されています。義務教育と同じ扱いで、国は無償で保障しなければならない。だからそこに税金を使ってもいいという国民の同意があるんです。面会交流施設も身近にあって、元夫婦が顔を合わせなくても安全に面会できます。

 日本は、まだまだ離婚は当事者が悪い、という個人責任論が多い。養育費を支払うのは親の義務という教育と、それをサポートする国の体制づくりが必要だと思います」(離婚問題に詳しい榊原富士子弁護士)

 ただ、諸外国と比較すると、離婚後も父母両方が子供に対する親権を持つ「共同親権」が導入されている点が、「単独親権」をとる日本とは大きく異なる。2019年11月22日には、親権を失った親が子供との交流を絶たれるのは違憲だとし、別居親らが東京地裁に集団訴訟を行った。

 子の養育に必要なことは何か──少しずつではあるが、潮目は変わり始めている。

※女性セブン2020年2月13日号

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