両親の離婚後、20年ぶりに再会「でも父は母を悪くは言わなかった」

[Re婚の先に 親は子は]父母のはざまで(下)

「年、取ったなあ」。しみじみ感じたのも無理はない。勇気を振り絞ってかけた電話をきっかけに2015年の冬、本島南部の会社員マユミさん(37)=仮名=は関西地方にいる父(72)を訪ねた。再会は両親が離婚した中学1年の時以来、20年ぶり。再婚した女性と2人、穏やかに暮らしていた。

【写真】父と一緒に撮ったスマホ画像に視線を落とすマユミさん

取得した資格や、歌が好きで地道に続けるバンド活動のこと。距離感に戸惑う娘の近況報告に、父はじっと耳を傾け「すごいな」「そんなことできるんか」と褒め立てた。

マユミさんとは長く疎遠だった半面、運送会社で働きながら娘2人の養育費を払い続け、祖母が亡くなった後は遺産を分けるため沖縄にやって来たという。「家族を捨てた男」。母の一言を思い浮かべマユミさんはもやもやしたが、父は子育てを一身に担った母の苦労を思ってか、決して母を悪くは言わなかった。

それから5年。昨年末までに4度会った父にとっては、家族一緒だった頃の少女のままなのだろう。

ドライブ中、ハンドルを握るマユミさんにそわそわして落ち着かず、空港へ向かう別れ際には単純な電車の乗り換えさえ間違えないよう念を押す。父自身は持病が悪化し、通院が欠かせないだけに、父譲りの容姿と甘い物好きな娘の体調も気掛かりなようだ。

「お父さんのことは私が見ているから、何も心配せんでいい」。父の再婚女性にすかさずそうフォローされ「あなたが持っておくべきよ」と手渡されたのは、おしゃれだった祖母の形見の指輪だ。マユミさんは心地よいひとときに浸った。「長い空白の時間があったのに、何の前提もなく受け入れてくれたというか。うれしかった」

近所付き合いが少なかった母は、認知症になった今も介護サービスを受けず、他人との関わりが薄い一方で、以前にも増して娘の支えを必要としている。定期的に実家に立ち寄るマユミさんはこれまで通り、ひたすら母に寄り添い、母を肯定する。

40歳手前。仕事にやりがいを見いだす働き盛りは、プライベートでは交際男性と同居して10年になる。「いい人はいないのか」と気に掛けていた父には男性を紹介し安心してもらったが、決めていることがある。「幸せになれるとは思えないから結婚はしない。出産も子育てもイメージできない」。両親の不仲とその板挟みにあった自分、いびつな母との時間が「反面教師です」と言い切る。

周りを見渡せば結婚、子育てを経て、離婚を選ぶ同世代が珍しくない。育児にも仕事にも一生懸命な、ひとり親の友人が多いマユミさんは「行き詰まった夫婦生活を我慢するより、別の道へ進んだ方がいい」と応援しつつ、実感を込めこうも助言する。「子どもが別れた親に会いたいと望んだときは、ぐっとこらえて気持ちをくんでほしい」

(学芸部・新垣綾子)

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