リアルな少子化対策は、非正規若者へのカネ支給と、共同親権

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20191228-00156754/

■非正規雇用が子どもをつくらないことが核心

一学年の出生数がついに90万人を切る見通しとなり(ことしの出生数 90万人下回る見通し 少子化想定上回るペース)、予想されたものよりはだいぶ早く少子化が進んでいる。

安倍政権になってから7年、お題目としての少子化対策は毎年叫ばれているが、そのことごとくが失敗したということになる。

それだけでも僕は辞任ものだと思うが、政局話はなるようになるだろう。あ、この10年で少子化対策委員みたいなものになった人たちも、総括と謝罪がほしいところだ。

少子化対策は、保育園整備とか就労支援、働き方改革などは二次的なものだと僕は思う。

非正規雇用が労働者人口の4割となり、この層が結婚しない、結婚できても子どもをつくれない、ということがこの問題の核心だ。

だから、若者への就労支援や細かい保育園改革は後回しでいいから、僕は、とにかく若者たちに直接カネを支給すればいいと思う。一人親家庭への手当てと同じように、「生活手当」的現金支給を毎月数万円、低収入の若者たちに支給することが最大の少子化対策になると思う。

ついでに、住宅手当なども加算していき、非正規雇用でも生活の心配をしないように公的資金で補っていけば、若者たちは「子ども」へと向かうだろう。NPOが中間的に就労支援する予算(数十億)などはすぐに廃止して、直接給付に変えたらいいと思う。悠長なことは言ってられない。

■SNSコミュニケーションが孤独をカバーする

もうひとつ、若者たちからするとイメージしにくいかもしれないが、「親権」の問題を安定させてあげるのも重要だ。

当欄でも度々触れるように、日本は単独親権であり、3組に1組が離婚する今、引き離された「別居親」(父が多い)はせっかく授かった子どもにせいぜい月一回の「面会」しか許されない。

せっかく結婚しても30%以上の確率で離婚する。また、離婚したあとも子どもに会えない(月1回の「面会」など「会う」には含まれない)などの情報が日常的にメディアに流れている。

そうした報道にさらされるリアルな感性を持つ若者たち、あまり「夢見ない」昨今の若者たちは、結婚のデメリットを日々感じてしまう。これに加えて、日常的に溢れる児童虐待やDVのニュースが若者たちを萎えさせる。

もちろん若者たちは孤独であり、「愛」を渇望している。が、少し前の若者たち(僕はバブル世代なので、僕以上の人々かな)と比べて、その孤独は結婚ではない別物で置き換えることができることを知っている。

それがSNSでのコミュニケーションであり、あるいはその孤独を満たすために作った作品たちを提示できるSNSの存在だ。自分の曲(あるいは「ゲーム実況」でもいい)をYouTubeで歌い披露することは、彼女ら彼らにとって大きな意味がある。

それは孤独を防ぐ。誰かと恋愛すること以上に、SNSでのコミュニケーションが、彼女ら彼らの孤独を癒す。

■ 「大人になること」はすなわち安定だった

親になっても安定できない。このイメージは決定的だ。1/3の離婚当事者に自分が仮に巻き込まれた時、家族が完全に解体される。

その、「安定しない家族」イメージのネガティブさが意外に大きく若者たちを覆っているように僕には思える。つまり、「結婚」は当然ゴールではなく、その先、つまりは離婚後の家族形態、収入のかたちまでもイメージしなければいけない時代になってしまった。

バブル世代の僕が若者の頃、ここまで人生をネガティブに捉えることはなかった。結婚は希望とゴールであり、もしかして離婚があるかもしれないがその確率は低い。「大人になること」はすなわち安定だった。

それが今はまったく異なり、大人とは安定ではなく不安定な存在なのだ。むしろ、反発しているとはいえ実の親に包まれた実家のほうが安定に結びつくイメージなのかもしれない。

そうした「安定」と「安心」と、結婚と出産に結びつけるイメージづくりが最も効果的な少子化対策だと僕は思う。

その具体的方法はつまり、

カネと環境、

言い換えると、

「生活手当」的具体的カネの毎月支給と、家族そのものを安定させる「共同親権」だ。

ある程度より収入が低い場合、毎月一定の「生活手当」が振り込まれ、離婚したあとも安定的に子どもと生活することができる。

こうした制度を国が思い切って整備したとき初めて、若者たちの間に安堵の空気が流れるだろう。その安堵を元にして、恋人と出会い、結婚し、出産を模索すると思う。小手先の少子化対策はすべて廃止して、「生活手当」と「共同親権」に絞り込むことだ。

4年前