離婚後の子どもの生活に欠かせない養育費を裁判などで決める際に使われる算定表が見直された。
最高裁の司法研修所が改定版をまとめた。見直しは16年ぶりだ。
現行の算定表に基づく養育費では、離婚後の生活を維持するのが難しく、ひとり親家庭の貧困を招く要因と指摘されてきた。
ようやく現在の社会情勢などを踏まえて改定し、全体的に増額傾向にはなったが、生活の困窮を防ぐのに十分といえない。金額面に加え、決められた養育費が支払われていない事例が相当数ある。
ひとり親家庭の生活実態を直視し、確実に支えていく仕組みと幅広い協力態勢が求められよう。
養育費は、夫婦の話し合いがつかない場合、家裁の調停などで決める。夫婦の収入と子どもの年齢、人数などに応じ、子と離れる親が支払う養育費の目安を一覧にした算定表が用いられている。
見直しは、収入から必要経費を差し引く従来の算出方法を踏襲しつつ、所得税などの税率や公立高の学費負担減といった変化を考慮。年収によっては月1万~2万円増など現行額以上に改めた。
だが、当事者らは生活改善に不十分とし、長く改定を放置してきた上に裁判所内だけで決めたことを疑問視している。
現行表や改定版も現役裁判官らの「研究」の形でまとめられ、外部は関与しえなかった。養育費を必要とする家庭の実情を反映させてほしいとの願いは当然だろう。
厚生労働省の2016年調査によると、母子家庭で養育費を受け取っているのは約24%しかない。離婚時に決めても受け取れなかったり、取り決めすらなかったりするケースが少なくない。
こうした場合も、公平で合理的な額を迅速に確定しやすい算定表を広く活用すべきだ。最新統計を定期的に取り入れ、当事者や支援機関、弁護士らの改定への参画や認識共有を図る必要があろう。
相手方の不払い増加も深刻だ。対策に乗り出す自治体もあり、兵庫県明石市は確定した養育費が受け取れていないひとり親家庭に市が立て替える形で一定額を支払う全国初の制度を設ける方針という。
来春施行の改正民事執行法では、養育費を支払わない人の預貯金の情報などを裁判所が取得し、財産を差し押さえしやすくなる。司法と行政などの連携が重要だ。
親の離婚によって子どもの生活と成長を脅かさないよう、養育費の確保に実効性を持たせていくことが急務だ。