https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20191210-00154444/
僕はこれまで子を連れ去られた(父)親側からの話をもとに、共同親権の有効性を主張してきた(単独親権の謎~法務省が「共同親権」研究会を立ち上げるほか)。
それが、一歩引いて思考を深めていくと、離婚後シングルマザーの高い貧困率と離婚後単独親権は深い親和性があるのでは、と思い始めた。
つまり、離婚後に「共同親権」であるならば、それなりの経済的保証を「元夫」(離婚後「別居親」になるのは男性側が多い)からの経済的保証を今よりは期待できるのではないか、ということだ。
こう考えると、離婚後75%の別居親(主として元夫)が養育費未払いなのもわからないではない。
別居親になった(主として)父親たちは、養育費を支払いたい。けれども、たった1ヶ月に2時間程度の「面会」程度の保証(しかも離婚後すぐにこの面会保証は履行されない場合が多い)で、わずかな稼ぎの中から数万円(僕の推測では月に4万円程度が平均養育費)を支払うインセンティブが生じるだろうか。
これが生じると信じるのが、古典的フェミニストなのかもしれない。
DV支援や特別養子縁組などで表面化するNPOのなかには古典的フェミニストが含まれ、「離婚した以上は養育費を(主として男性側)別居親が支払うのは当たり前」という教条主義を押し付けてくる。
けれども、経済的余裕があったとしても、数万円とはいえある意味「固定費」を10年以上に渡って強要されることの見返りを、親権を持っていない親サイドが応じないことも、仕方ないといえば仕方ないのではないか。
■「単独親権」制度が、別居元親のそうした思いを許さない
離婚も養育費も仕方ないし、当たり前の行為だと思う。
けれども、その当たり前さに相当するだけの権利を親権を持っていない自分にも与えてほしい。離婚して別居する親たち(主として父親側~もちろん女性もおられる)がそう考えてもおかしくはない。
メディアにはなかなか登場しないが、毎年離婚する20万カップル(!)のうち、多くの別居元親がそうした葛藤に巻き込まれている。そして、それなりの元親としての権利が保証されているのであれば、養育費も支払うし、元配偶者や今も当然「我が子」を貧困に追い込みたくないと考えている。
当たり前だ。離婚したとはいえ、多くの元親たちは、自分の子どもが貧困の苦労を味わってほしくないと考えている。そして、自分にできることがあればやってみたいと考えている。
が、「単独親権」制度が、別居元親のそうした思いを許さない。法的結婚形態を解消し、親権も手放し(手放さざるを得ない)たのだから、日常的子どもとの交流を諦めよ、というわけだ。
ただし、それなりの養育費的おカネを支払いなさい、ともささやく。
そのように、現在の我が国の(民)法形態は、離婚し親権を手放した親たちに厳しく迫ってくる。
■多くて月一回の「面会」に留められてしまう元親たちの経済力がまったく生かせられないという現実
離婚後親権を手放した別居親たちは、その75%が養育費を支払わない。
それに対して例えば明石市などは相応のペナルティを課そうとしている(養育費不払いに「反則金」 明石市、悪質ケースで徴収へ)。
けれども、離婚後も親権を奪われ多くて1ヶ月に1度の「面会」(自分の子どもに会うのになぜ「面会」か)程度では養育費を支払うことはできない、というのもひとつの親の心情だろう。
そういう事情もあり、離婚後の同居親(この多くがシングルマザーと呼ばれる)が貧困状態に追いやられていく。
これはさて、離婚したあと養育費を支払わない親たち(主として父親たち)が悪いのだろうか。
表面的なことばからは、父親たちは悪い。けれども、そうした父たちが養育費を支払いたくない心情もよくわかる。
月に2時間程度の「面会」って何だ?
親なのに。そして自分はDV親とは遠い存在なのに。
そうした人間らしい葛藤から、離婚後シングルマザーの貧困は現れると、やっと僕は気づいた。離婚後、我が国は自動的に単独親権となる。親権を持たない別居元親たちは、いくら経済的に余裕があっても法的には遠くなる。
女性の貧困や子どもたちの貧困は、メディアではそれぞれ単独で語られる。シングルマザーはダブルワークでたいへんだ。7人に1人の子どもが貧困状態に追いやられている。
けれども、ダブルワークの母たちを追いやっているもの、7人に1人の貧困状態に子どもを追いやっている原因がある。それは、離婚後「単独親権」となり、多くて月一回の「面会」に留められてしまう別居元親たちの経済力がまったく生かせられないという現実だ。
ここでは、10%にも満たないと言われるDV親たちの存在は看過しよう(これは主として警察案件となる方が望ましい)。
ポイントは、別居元親となり、月に2時間しかない「面会」の権利しかない親たちのあり方だ。
ここをなんとかすれば、シングルマザーは貧困ではなくなると思う。
つまり、親権をもった別居親たちの経済力を加味すれば、貧困の問題も今よりは少し解消されていくだろう、と僕は思う。
そして、置き去りにされている子どもたちの思いも少しはすくい取られていくだろう。