子ども3人を育てるママ弁護士が考えた共同親権というベストな社会

https://news.yahoo.co.jp/byline/akechikaito/20191031-00149077/

10/11 日本の親子断絶問題 院内報告会(子どもオンブズマン日本 撮影)

法務省は離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権」の導入の是非について検討する研究会を年内に設置すると発表しました。結論を受けて導入が必要と判断すれば、法相が民法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しです。

今回は共同親権弁護士として活躍されている弁護士の古賀 礼子さんに、これまでの共同親権の取り組みや今後の展望などについてお話を伺いました。

今こそ家族の在り方そのものを議論すべき

明智  まずは自己紹介をお願いします。

古賀  はじめまして、古賀 礼子と申します。養育権侵害国家賠償請求訴訟を担当する予定です。元々は離婚後子育て応援弁護士として、子育て世代の離婚案件を扱ってきました。これまで、養育費や面会交流を通じた離婚後の子育てという観点から、両親の離婚に直面した子どもを泣かせることがないように心がけてきましたが、だんだんと共同親権の民法改正が不可欠だと考えるようになりました。

弁護士登録をしてから我が子を連れ去られたという方の相談を受け、その後も類似した事案への対応を重ねて取り組んできました。厳しい結果が続く中で、より詳しく学ばなければならないと思い、共同親権ネットワークの交流会や、親子ネットの講演会に参加するようになりました。私自身、子連れ離婚をした同居親として養育費や面会交流について悩む当事者という立場もあり、自分事として経験し学んだことを事件解決の糸口に役立ててきました。

当事者の勧めもあって新聞に投稿すると、家族の在り方そのものを議論すべきとする意見が掲載されました。2015年に最高裁大法廷判決で夫婦同氏原則が合憲とされたことを受けて、家族の在り方について議論すべきは姓の問題にとどまらず、親権の不平等の問題があることを指摘するものでしたが、全国紙に掲載されたため全国からの反響がありました。あれから4年、まるで予言が的中したかのように夫婦別姓訴訟、同性婚、そして親権制をめぐる話題が尽きず驚いています。

子どもに優しい親権制はどれ?

明智  田村淳の訊きたい放題!でのキキタイ世論調査では『離婚後の親権をどうすべきだと思いますか?』の結果が、「合意あれば共同」がもっとも多い回答となりました。「合意あれば共同」とはどういう意味ですか?

【 1.単独を維持 1015pt 2.合意あれば共同 3299pt 3.合意なくても共同 2283pt】

古賀  合意の有無と親権制について単独か共同かでいうと、本来4つの選択肢になるはずです。

筆者作成

現行制度は合意があっても、なくても単独親権の選択肢しかありません(1-1、1-2)。本当の意味で合意がある場合、すなわち、父母が互いに協議していわば親の代表を決める単独親権にすることは問題ないでしょう。これは、結局、父母双方で子の監護についての在り方を決定しているのですから。しかし、単独親権は合意がある場合でも(1-1)、離婚条件について十分に協議を尽くした場合(1-1-1)と、離婚と親権者の指定だけ決めた場合(1-1-2)があるでしょう。問題は後者です。養育費や面会交流について詳しい協議をせずに協議離婚が成立した場合には、簡単に離婚ができるように見えますが最も貧困リスクが高いといえます。養育費未払い問題の根底にあるのは取り決めがないこと、相手と関わりたくないため取り決めをしないといったことが挙げられます。取り決めがないので、いつ、いくら、どのように払うのか不明な状態では払われることは難しく、逃げ得を許してしまいます。また、面会交流も取り決めがないと、会えない状態が続いてしまいます。離婚条件で特に共同養育の合意のない協議離婚(1-1-2)は、子の福祉を損なう場合があるのです。

合意のない場合(1-2)には離婚裁判によって強制的に離婚が成立するとともに、婚姻中共同親権であった父母の一方の親権を剥奪します。記号的に分かりやすくいうために、単純に数値化できるものではないことは重々承知で、親の監護能力をLV10MAXとして表します。一方がLV8で他方がLV1であれば、裁判所の親権者指定は子の福祉のために機能するでしょうし、これが司法の役割かもしれません。しかし、現行の単独親権制というのは、監護能力がお互いにLV10であっても必ず一方の親権は奪われ、単独親権者が指定されます。甲乙つけがたい状態であっても現に同居監護していればその状態を尊重するので、たとえ養育能力が劣っていなくても他方親の親権は失われます。一方で、LV1とLV1同士でも親権者の指定手続きでは親権者は指定されます。LV1の親が親権者になることがある一方で、LV10の親が親権を失うことがあるのが単独親権制です。そもそも養育能力に大きな問題のない親に甲乙をつけて一方の親権を奪うという強力な介入行為が司法の役割として適切なのでしょうか。強制的な単独親権制においては養育費の金額については算定され義務付けられることはあるものの、教育費に関する協議条項などが盛り込まれないので養育環境を細やかに整えることができるものではなく、共同養育の合意のない協議離婚(1-1-2)と同様のリスクが懸念されます。(1-2)、(1-1-2)は危険ということです。

2019年2月に国連から共同親権・共同養育に関する法改正をすべき勧告などがあり、法務省も共同親権についての研究会を発足することを発表しています。いわば共同養育の合意(1-1-1)を社会の責任として実現することという意味で、合意のある場合に共同親権(2)の選択肢を用意することは大きな意義があります。これまで、LV10でもLV8でも親権を失わざるを得なかった親も引き続き親権者の地位を失わずに済むことができます。マイナスでなければ、親権者であることを否定されないということは、同居親にとっても安心です。単独親権制では、LV4の親にとってLV8の相手親の親権を奪わない限り、自分の親権が失われていくことは恐怖でしょう。親権を失わないために、抱え込まなければならない、面会交流にも寛容になれない仕組みを単独親権制は孕んでいます。単独親権制が、子の奪い合いを引き起こすため、いくら、合意による共同養育が可能だといっても、ハードルが高くなってしまいます。これが、共同親権の選択肢があることで、面会交流に寛容であることで、相手親と子の関係が良好になっても、自身の親権を奪われることがないという安心感になります。それゆえ、共同親権があれば、子の奪い合いを回避しうるでしょう。そういう、合意のある共同親権(2)は、共同養育の合意のある単独親権(1-1-1)に比べ、社会の責任によって、幅広く共同養育を実現するので、子どもに優しい親権制といえます。

最後に、合意のない共同親権(3)について考えます。実は子どもの目線から考えたときに最も重要なのは、合意のない場合にも共同親権を認めることでしょう。子どもにとって、父にも母にもアクセスできることが大切なのです。両親のどちらに対しても養育責任を果たすことを要求できることが、子の福祉の最大化に貢献すると考えるのが自然です。子どもがしっかり成熟するよう両親からたっぷり愛情を注がれ、そして養育にかかる費用を分担してもらうというのが子どもの権利であり、共同親権は子どもの権利です。これを、父母の合意のある場合に限定するということは子どもの権利の制約になります。そのため、父母の合意がなくても共同親権になることが、子どもの権利の実現のためには不可欠なのです。もちろん、合意ができない父母は意見が対立し、子どもに関する大切な事項についてお互いの希望が衝突することもあるでしょう。その場合には裁判所等が適切に介入し、子の福祉を最大化する判断を迅速に行うことが必要になります。合意がないからといって一方の親の独断で決定してしまうことが、子の福祉にとって最善とは限りません。共同親権者の親権行使が適切であるかのチェックを細やかに行っていくことが共同親権制の真髄であり、すでに共同親権制を採用している多くの諸外国が取り入れているシステムです。子どもの権利を保障するために、父母の合意のない場合にも共同親権が実現できることが望ましいのです。

子どもたちにとってベストな社会は何かを問い続けることも大切な子育て

明智  共同親権について今後の展望や、求めてる方たちにメッセージをお願いします。

古賀  両親の婚姻中は共同親権、離婚後は単独親権という、婚姻と親権の在り方を紐づけた固定的な制度では柔軟に子の福祉の最大化を模索するという思考には結び付きません。ようやく単独親権制の不合理について国内外からの指摘を受けて、政府が考え動き出したことは心強いことでしょう。必ず、民法改正は実現するので、その時まで子どもたちにとってベストな社会はどういうものかを考え、学び、できるところから取り組んでいくことは大切な子育てだと思います。私は、未来を生きる子どもたちを思う親心あふれる子育てを応援しつづけます!

2週間前