「離婚後のお金」は、離婚を考えている女性の多くが抱える問題です。お子さんがいる場合は、夫からの援助が大きな支えになると思われます。しかし、現実的には支えてもらえるほどの金額はもらえず、ゆえにシングルマザーの貧困問題へとつながる可能性があります。
まず、多くの方が勘違いされているのが『婚費』(婚姻費用)と『養育費』の認識です。この2つは、別々に受け取ることはできません。
通常、別居中に受け取れる生活費(養育費含む)が『婚費』です。そして離婚後、子どものいる元妻がもらえるのが『養育費』です。この費用はどのように決まるのでしょうか?
基本は、裁判所が算定した表からの算定になります。裁判所のサイトから「養育費・婚姻費用算定表」をご覧いただくとわかるように、年収と子どもの人数により支払われる金額が変わります。もちろん、相手側が「もっと支払うよ」と言ってくれれば、金額に制限はありません。
しかし、相手が「支払いたくない」という気持ちで、資産隠しをしてでも支払いを拒む場合もあります。さまざまな事情で争う場合は、弁護士・裁判所での争いとなり、さらに費用も発生し、精神的にも苦しくなるのです。
しかし、この算定表、東京で暮らす筆者はいつも不思議に思います。なぜ、婚費・養育費は全国平均なのか?それは不公平なのではないかと、考えさせられるのです。
やはり、東京の物価水準は高いと思います。東京で暮らすのには何かとお金がかかります。生活費・学費・必要最低限の支出も、他の都道府県より高いでしょう。もちろん、地方都市も同じように物価水準が高いところもあります。
物価水準が高い区域は、算定表に増額など、見直しはできないものなのでしょうか。筆者は、調停に取り組む方のライフプランニングを担当することがあります。以前、都内の一等地に住み、子どもを私学へ通わせている妻側からのご相談を受けたことがあります。
その方は子どもをサッカー推薦で入学させました。ですから、部活を辞めることイコール学校を退学させられることになります。しかし、部活の費用がとても重く、別居中の夫のサポートがないと生活がキツキツなのです。
しかし、「婚費の算定表」の壁は厚く、容易には進みませんでした。
このような時、さまざまな立証(ライフプランや生活費の資料)をすることで、壁を破ることができる場合もあります。もちろん、確約ではありませんが、前向きに考えても良いことかと思います。また、裁判外で弁護士が介入した場合、先見のある弁護士はライフプランニングを採用し、相手側と交渉をしてくれています。
このような文化が根付き、裁判所の調停委員の方も、お金に詳しい人が増えると、シングルマザーの貧困問題も多少は改善されるかもしれません。
『養育費』という名目で、離婚後のお金を受け取るのはハードルが高いこともあります。意外にも、男性は女性よりメンタル的に弱い部分があり「約束して支払えない場合はどうしたらよいのか」と思い、できるだけ安全な金額を指定したり、期間を早めたりする場合もあるようです。
しかし、もっとざっくばらんなスタンスで、子育て支援をしてもらったらいかがでしょうか?
それには「共同養育」がオススメです。「共同養育」とは離婚後も元夫婦が共同で子育てを行っていくことです。法務省は2019年9月27日、「共同親権」の導入の是非を議論する研究会を立ち上げると発表しました。
実は、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)参加国の中で「単独親権制度」を採用しているのは日本だけなのです。
今でも日本では、離婚後に子どもに会えずに苦しんでいる父親が大勢いらっしゃるのですが、「共同養育」をすることで、お財布のひもも緩くなるもの。時代は「共同親権」に向かっています。面会交流も拒まず、積極的に行うと自分自身が楽になると思うのです。
日本では、子どものいない妻に対し、離婚後の扶養義務がありません。これによって困っている方も多いと思います。第三号被保険者で『年金分割』ができる方は、多少の恩恵はあるかもしれません。
しかしこれは、一人で生活をしていくだけの余裕のある資金とはいえません。子どもがいなく、夫につくしてきた妻が、夫の成功と共に捨てられてしまう話は今の時代でもたくさん耳にします。
筆者は、子どものいない妻に対しては「経済的にも精神的にも自立を」というお話をしております。決して泣き寝入りをするのではなく、不本意な離婚の場合は、自分が立ち直れ、生活をしていける準備金の主張をすることも、必要なことだと思います。
人生100年時代、離婚によって人生がマイナスになるのではなく、新たな世界・新たな可能性が広がっていくことが大切ですね。
出典 裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部