「養育費不払いなら名前公表」 全国初の制度検討 兵庫 明石

兵庫県明石市は、離婚後に子どもの養育費が受け取れず生活が困窮することを防ぐため、養育費を支払わない人の名前を公表できるようにする、全国で初めての制度の導入を検討していることを明らかにしました。

明石市によりますと、名前の公表を検討しているのは裁判などで養育費の金額が確定しているケースで、まず市が、離婚した相手に支払いをするよう「勧告」を出します。

「勧告」に応じなければ「命令」を出し、それでも支払わない場合は市のホームページなどで相手の名前を公表するということです。

また、相手側に弁明する機会を設け、病気で働けないなどやむを得ない事情がある場合は公表しないとしています。

明石市は、こうした内容の条例案を来年の市議会に提出することを検討していて、成立すれば全国で初めてのケースになるということです。

養育費の不払いをめぐって明石市は、養育費の受け取りが滞っているひとり親の家庭を対象に、毎月5万円までを立て替えて支払う全国でも珍しい制度をすでに設けていて、「名前の公表が目的ではなく養育費を受け取れず困窮することを防ぐために検討を進めている」としています。

明石市長「丁寧に議論重ねる」

兵庫県明石市の泉房穂市長は、報道各社の取材に応じ、「やみくもに氏名を公表したいわけでなく、夫婦間で約束した養育費をきちんと支払ってもらうための仕組みとして考えている」と述べました。

その上で「どのような手続きで、どういった方を対象に、どう公表するのか、丁寧に議論を重ね、運用法を検討する」と述べ、有識者や当事者の意見を聞きながら条例案の提出を目指す考えを示しました。

専門家「養育費と面会交流のバランスを」

家族法に詳しい早稲田大学法学学術院の棚村政行教授は、「日本では養育費を支払っている人が全体のおよそ4分の1と、養育費を払えるのに払わないという人が多く、先進国の中では割合が低い。こうした状況の中で、明石市が氏名公表の措置を打ち出したのは画期的で評価できる」と述べました。

一方で氏名を公表したことで、社会的なレッテルを貼られてしまい、結果的に養育費の支払いが途切れてしまう可能性もあると指摘し、「強制力やペナルティーが1人歩きしてはいけない。よほど悪質でないかぎり、心理的に支払いを促す程度に運用されるのが望ましい」と述べました。

そのうえで、「そもそも子どもの成長を考えるうえでは『養育費』と『面会交流』は車の両輪でどちらかだけではなく、バランスの取れた取り組みが欠かせない。養育費を受け取る側が子どもの状況を丁寧に伝えるなどすることで、支払う側も安心できるのではないか」と述べ、社会全体で取り組んでいくことが大事だと強調しました。

歓迎の一方冷静に考えるべきの声も

ネット上では、制度の導入をすべきだと歓迎する意見がある一方、個人名の公表については冷静に考えるべきだという声がありました。

このうち、歓迎する人たちからは、「母が金銭的にかなり困窮したのでこの動き、全国的になってほしい」とか、「全国でやってほしい。うちも未払で大変」などと、当事者と見られる人たちの声のほか、「不払いについて一石投じるし、みんなで考える機会になるから、とってもいいと思う」、「逃げ得をさせてはいけない」などといった声がありました。

一方、「養育費不払いについては言いたいことがたくさんあるけど、氏名公表はさすがに行きすぎでは」、「氏名公表は人権侵害だと思う。普通に給料を差し押さえればいい」などと、制度の導入は冷静に考えるべきだという声もありました。

さらに、「子どもに被害が出ないか心配だね」、「氏名公表って今の時代だとネット上にいつまでも残ってしまう。子どもが大きくなってからその事実を知ったり、お前の親は養育費も払わなかったんだな。なんて言われることもあるのだろう」と名前が公表された場合に子どもへの影響を心配する声も相次いでいます。

このほか、養育費だけでなく、面会交流の必要性を訴える投稿も多く、「養育費を取るだけ取って子どもに会わせる約束を平気で破る親権者もいますがそのような場合、どのように対抗すればいいのでしょう」、「子どもには会わせないけど、養育費は払えということにならないよう望みます」などといった投稿がありました。

5年前