東京都目黒区で2018年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里被告(27)に対し、検察側は9日、東京地裁で開かれた裁判員裁判で、懲役11年を求刑した。
検察側によると、優里被告は12年に結愛ちゃんを出産した後に当時の夫と離婚し、16年4月に雄大被告(34)=保護責任者遺棄致死と傷害の罪で起訴=と再婚。同年11月、2人の間に長男が生まれ、この頃から結愛ちゃんに対する雄大被告の暴行が始まった。結愛ちゃんは児童相談所に2度、一時保護された。
一家が18年1月に香川から東京都目黒区のアパートに転居すると、虐待はエスカレート。結愛ちゃんはほぼ外出させてもらえず、殴られたりベランダに立たされたりしたほか、食事も十分に与えられなくなって衰弱し、3月2日に敗血症で死亡した。死亡時の体重は同年齢の標準より6キロ近く軽い12・2キロで、170カ所以上の傷やあざがあったという。
検察側は、優里被告が虐待の発覚を恐れて病院に連れて行かず、放置したと主張している。
一方の弁護側は、罪の成立は争わないとしつつ、雄大被告から心理的なドメスティックバイオレンス(DV)を受け、精神的な支配下にあったと訴える。
優里被告は被告人質問で、再婚後に雄大被告から説教が繰り返されるようになったと説明。雄大被告の命令は絶対で「ロボットのように聞いていた」とし、反発して怒らせると結愛ちゃんに怒りが向くため、結愛ちゃんの衰弱を見過ごしたとしている。
公判では、結愛ちゃんがノートや紙片に書いた言葉が読み上げられた。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」と懇願するようなメッセージのほか、「あしたのあさはきょうみたいにやるんじゃなくて パパとママにみせるぞってきもちでやるぞ えいえいおー」と自らを奮い立たせたようにも読める文章も残っていた。【巽賢司】