https://news.yahoo.co.jp/byline/saruwatariyuki/20181031-00102484/
猿渡由紀 | L.A.在住映画ジャーナリスト 10/31(水) 9:42
リッチで美しいセレブにとって、世の中は楽な場所。ワールドシリーズだろうがブロードウェイミュージカルだろうが入手困難なチケットも思いのままだし、ブランド商品だってタダでもらえたりする。
だが、そんな彼らでも逃れられないものがあった。養育費だ。
払わずにしらばっくれようとしたら、銀行口座を凍結されたり、運転免許を取り上げられたり、最悪、刑務所にも入れられたりする法律に、特別扱いはない。何らかの事情で裁判所が決めた金額を払えなくなったら、金額の再検討を裁判所にお願いするしかないのだ。先週も、元ヤンキーズ選手アレックス・ロドリゲスが、養育費減額を交渉していると報道されたばかりである。
キャメロン・ディアスやケイト・ハドソンとも交際歴がある彼がマドンナと不倫をし、離婚に至ったのは2008年のこと。以来、彼は、元配偶者サポートと、娘ふたりの養育費として、月に11万5,000ドル(約1,300万円)を払ってきた。しかし、かつて3,000万ドル(約34億円)あった年収は、現役を離れた今、10分の1の300万ドルになっている。その間、前妻には新しい子供と婚約者ができ、家を3軒も所有するようになったそうで、ロドリゲスは、月々の支払いを現在の5分の1以下の20,000ドルに下げてほしいと要求しているそうだ。
ロドリゲスの現在の恋人ジェニファー・ロペスにも、3番目の夫マーク・アンソニーとの間に、双子がいる。だが、Fox News Latinoが報道するところによると、珍しいことに、この元夫婦は、どちらもお互いに養育費を払わないことで合意しているそうだ。それはアンソニーにとって大きな救いだろう。アンソニーは、最初の妻ダヤナラ・トレスとの間に生まれたふたりの息子のために、すでに月2万6,800ドル(約300万円)を払っているのである。かなりの金額だが、トレスが裁判所に求めたのは6倍近い月12万3,426ドルで、彼女にしてみたら不本意だったようだ。
収入が増えても養育費に影響を及ぼすことが
収入減を理由に養育費減額を求めたセレブは、ロドリゲスのほかにも何人かいる。たとえばチャーリー・シーンだ。
「Two and a Half Men」に主演していた頃、テレビ界で最も高いギャラを稼ぐスターだったシーンは、素行の悪さで番組をクビになって以来、すっかり仕事がなくなってしまった。シーンには、2番目の妻デニス・リチャーズとの間にふたり、3番目の妻ブルック・ミューラーとの間にもふたり子供がおり、リチャーズとミューラーそれぞれに毎月5万5,000ドル(約662万円)の養育費を払っていたが、リチャーズとミューラーは最近、月2万5,000ドルに減額することを受け入れている。もしシーンが裁判所に行けば、もっと低い金額を言い渡されるであろうことを危惧しての元妻同士のチームワーク作戦だ。
「ハムナプトラ」シリーズなどに主演し、大活躍していた頃に結婚、3人の子に恵まれたブレンダン・フレイザーも、2007年の離婚後はどんどん右肩下がりになり、後に養育費減額を申し出ている。昨年は、ダニー・ボイル監督のテレビドラマ「Trust」で再び少し注目されたが、過去の勢いには、ほど遠い。
一方で、収入が増えたために養育費が急増したのが、ジェレミー・レナーだ。
前妻との間にひとり娘をもつレナーは、離婚時、月1万3,000ドル(約147万円)に加え、年収が230万ドル(約2億6,000万円)を超えた年は、それに応じてパーセンテージを支払うことで合意していた。だが、「アベンジャーズ」「ミッション:インポッシブル」など大人気シリーズに出るようになった今、彼の年収は1,000万ドルを超えるようになり、年30万ドル(約3,400万円)近くも払わなければいけない状態になってしまっている。そこで元夫婦は再び裁判所を通じて話し合い、レナーの支払いは年20万ドルを上限にすること、それを上回る金額は娘名義の口座に教育資金として貯蓄されることになった。もっとお金をもらえるようになったはいいが、出て行く分と気苦労も、それだけ増えてしまったわけだ。
養育費支払い義務に男も女も関係ない
養育費に悩まされるのは必ずしも男と限らない。ブリトニー・スピアーズは、その典型的な例だ。
バックダンサーだったケビン・フェダーラインとの短い結婚の間にふたりの男の子を授かったスピアーズは、離婚前後、依存症に陥り、母親として責任ある行動を取れないと判断されたことから、フェダーラインが単独親権を得た。今では回復し、子供たちとたっぷり時間を過ごしているが、養育費はずっと月2万ドル(約226万円)ずつ払ってきている。これとは別に、学校の授業料、教材費、習い事、服代なども、彼女もちだ。
にもかかわらず、報道によると、フェダーラインは、今年5月、養育費を6万ドルに増額してほしいと裁判所に申し出た。理由は、「40歳になった今、ダンサーとして、もう以前のように仕事ができない」からだという。フェダーラインは再婚相手との間にさらにふたり子供を作っており、それらみんなの面倒を見せさせられているようだとスピアーズは闘ったが、最終的にはいくらかの増額に同意したそうである。
アン・ヘッシュも、最初の夫との離婚の時、月3,700ドル(約42万円)の養育費を払うことになった。彼女の場合も、カメラマンの夫よりずっと収入が多く、夫側から「彼女に母親は務まらない」と言われ、単独親権を要求されている。しかし、ハル・ベリーの場合は、結婚もしておらず、共同親権で、娘は半分ずつ時間を過ごしているのに、ベリー側が月1万6,000ドル(約181万円)もの養育費を払うことになった。娘の父親は、モデルのガブリエル・オーブリー。金額は裁判所が決めたが、オーブリーに働く様子が見られず、養育費を自分の服や車に使っていると見られることから、ベリーはあらためて裁判所に対し大幅な減額を要求している。
これらの子供たちが誕生した時、幸せな親子の姿は、微笑ましいニュースとしてメディアに取り上げられたものだ。しかし、途中、何かがこじれて、その時には思いもしなかった展開になってしまった。そして、そんな話は、次々に出てくる。最近では、アンジェリーナ・ジョリーが、まだ離婚も成立していないブラッド・ピットが「ろくろく養育費を払っていない」と裁判所に申し立てた。しかし、ピットによると、2年前に離婚を申請されてから、子供たちのためにはこれまでに130万ドル(約1億4,700万円)を払っているとのことだ。世界中を魅了したこのカップルも、しょせん人間。醜くなる時は、醜くなる。永遠のフェアリーテールは、誰にも約束されないのだ。