国際問題12月号:◎巻頭エッセイ◎家族の国際化への子の保護に関するハーグ条約の対応 / 鳥居淳子

◎ 巻頭エッセイ ◎

 家族の国際化とは

Torii Junko

http://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2010/2011-12_001.pdf 

家族の国際化とはどんな現象を言うのだろうか。まず、考えられるのは、異国籍 の者との婚姻や養子縁組などの身分行為による家族の国際化であろう。しかし、家 族全員が同一国籍であっても、そのなかの誰かが、商用、軍務、留学、出稼ぎ、海 外移住等で長・短期に本国以外に滞在するような場合、あるいは、戦争や内乱、災 害等で、家族が複数の国に別れ別れに住まざるをえなくなるような場合も、広い意 味で、家族が国際化する場合と言える。

国際化した家族は、複数の法制度にかかわって生活することになり、一国のそれ なりに統一的に作られた法制度の下で生活する場合には生じない不利益を被る場合 がある。そして、そのような不利益を被りやすいのは、子ども、高齢者、女性など の家族のなかの弱者、特に子どもである。国際社会は、いままでに、このような子 の保護を目的とした条約その他の国際文書を数多く作成してきた。現在、日本が批 准のための準備を進めている、ハーグ国際私法会議が 1980 年に採択した、「国際的な 子の奪取の民事上の側面に関する条約」(以下、「子の奪取条約」と言う)も、家族が 国際化した場合に子どもに生じうる不利益を可能なかぎり取り除こうとする国際文 書のひとつとして捉えることができる。

そこで、この小稿では、第 2 次世界大戦後にハーグ国際私法会議が作成した条約(以下、「ハーグ条約」と言う)が、広い意味での家族の国際化のなかに置かれた子の保護の問題にどのように対応してきたかを、きわめて大まかにみることにしたい。

子の保護に関するハーグ条常居所の重視と国家間協力の仕組みの構築

子の保護に関するハーグ条約には、子に対する扶養義務、子の監護養育および養 子縁組に関するものがある。これらの条約にみられる、子の利益保護の問題への対 応は、大きく分けて、次の 2 つであると言えるであろう。

第 1 は、準拠法および裁判管轄権の決定において、国籍よりも常居所を重視する 方向への移行による対応である。

本国法より常居所地法の重視を最初に行ったのは、1956 年の「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約」(以下、「子扶養準拠法条約」と言う)である。同条約は、第2 次世界大戦の戦中・戦後における避難民の国際的移動や駐留外国軍人の他国への移動等により、扶養義務者である親等から事実上遺棄された状態に置かれた子の扶養問題に対処すべく作成された。同条約は扶養義務の原則的準拠法を子の常居所地法と定めたのである。このことはハーグ条約にとって画期的なことであった。それまでの身分法分野に関するハーグ条約は、すべて、当事者の本国法を原則的準拠法と定めていたからである。同条約が、子の利益保護になるとして、扶養権利者である子の常居所を連結素として採用した理由は、子の扶養の問題は、子が現実に生活する常居所地の経済的・社会的状態に密接に関連していること、子の常居所地の法の適用によってその地の公的扶養制度との調和を図ることが可能となること等である。

扶養権利者の常居所地法を原則的準拠法とする立場は、子に対する扶養も含めた親族扶養一般を対象とする 1973 年の「扶養義務の準拠法に関する条約」(以下、「扶養準拠法一般条約」と言う)でも、既存の扶養義務の準拠法に関するハーグ条約の現代化を図った 2007 年の「扶養義務の準拠法に関する議定書」(以下、「2007 年議定書」と言う)でも維持されている。

扶養義務に関する条約ばかりでなく、子の監護養育に関するハーグ条約でも原則的常居所地主義への移行がみられる。1961 年の「未成年者の保護に関する官庁の管轄権及び準拠法に関する条約」(以下、「1961 年条約」と言う)は、原則的本国主義を採る 1902 年の「未成年者の後見を規律するための条約」(以下、「1902 年後見条約」と言う)を原則的常居所地主義へ改めることを目的として作成された。同条約は、1902 年後見条約をめぐるオランダとスウェーデン間の紛争事件(「ボル事件」〔BallCase〕として知られている)につき、1958 年に国際司法裁判所が下した判決(I.C.J.Reports, 1958)を受けて作成された。この事件は、オランダ国籍の未成年者につき、その常居所地国のスウェーデンの公的機関によるスウェーデン法に従った保護教育措置が 1902 年後見条約に違反するとして、オランダがスウェーデンを訴えた事件である。国際司法裁判所は、当該措置は、私法上の後見を対象とする同条約の適用範囲外であると判示して、スウェーデンを勝訴せしめた。この事件は、子の常居所地の公的機関が、子の国籍にかかわりなく、子の保護措置をとる時代には、本国主義をとる 1902 年後見条約では、もはや対応できなくなっていることを示した。1961 年条約は、子の常居所地国の公的機関が子の保護措置に関する管轄権を有し、その国内法に従って措置することを認めた。そこには、子についてその最善の利益を適切に考慮できるのは、子の常居所地であり、その地の司法・行政機関がその国内法に従って子の保護措置をとるのが適当であるとの認識がある。しかし、1961 年条約では、なお本国の管轄を認めるなどの規定があり、常居所地国の管轄との競合問題が生じることや、国家間協力に関する規定が不十分であることなどから、同条約は、1996 年の「親責任及び子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行及び協力に関する条約」(以下、「親責任条約」と言う)により改正されている。親責任条約は、子の常居所地国の公的機関が子の保護措置につき優先的管轄権をもち、子の国籍所属国等に認められる管轄権は例外であることを明記し、管轄権を行使する国は原則として自国法を適用して保護措置をとることを定める。そして、裁判所または行政機関が関与することなく法律上直接生じる親責任の付与・行使・消滅は子の常居所地国の法律によると定め、子の常居所地主義を鮮明にしている。また、国家間協力については、後述の「中央当局制度」の採用によって1961 年条約のもつ問題点の克服に努めている。

国際養子縁組についても、常居所を管轄権決定の第 1 次的基準として取り入れた条約が作られた。1965 年の「養子縁組に関する裁判管轄、準拠法及び判決の承認に関する条約」(以下、「1965 年養子条約」と言う)がそれである。同条約の作成の背景には、次のような状況があった。第 2 次世界大戦後、交通機関の発達と相まって、戦災孤児や戦後に多く生まれた混血児など、その本国では適当な養親を見出しにくい子との国際養子縁組が、子や実母等への十分な法的・社会的保護手段を欠いたまま広範に行なわれだし、さまざまな弊害が生じていた。そこで、国際養子縁組につ

いて生じる可能性のある弊害から、子、実母、養親等の関係者を護ろうとする動きが社会事業家や法律家の間に生じていた。1965 年養子条約は、このような動きのなかで作成されたのである。条約が、子の利益保護を目指したことはその成立の経緯から明らかである。たしかに、同条約が、養子縁組の成立を認める裁判等の第 1 次的管轄権を養親の常居所地国に認めたことは、養子縁組の機会を増やすことから、子の利益になることである。しかし、縁組成立に関する管轄権を養親の常居所地国および本国に限り、管轄権を有する国の法が原則的準拠法となると定めたことは、養子の出身国にとって受け入れがたいものであった。同条約は、締約国であった 3ヵ国のすべてが廃棄したことにより、2008 年 10 月 23 日に失効している。

第 2 は、国際的環境に置かれた子の実効的かつ迅速な保護のため国家間協力の仕組みを作ることによる対応である。1980 年の子の奪取条約は、各締約国により指定された中央当局が国際協力によって不法に連れ去られた子の迅速な返還に取り組むための仕組みを構築した(以下、各締約国の中央当局が中心となって国際協力により子などの要保護者の保護を図る仕組みを「中央当局制度」と言う)。同条約作成の背景には、破綻した国際結婚の一方当事者が、国境を越えて不法に子を連れ去るという事例の増加がある。

子の奪取条約で構築された中央当局制度は、1993 年の「国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」(以下、「1993 年養子保護条約」と言う)でも取り入れられている。同条約作成の背景には、発展途上国の子どもが養子となるために、出生率の低下した、いわゆる先進国に送られるという形態の国際養子縁組の急増という状況がある。このような養子縁組には、その背後に、子の誘拐や、養子縁組という名の下の子どもの売買、取引などの危険が潜む場合がある。同条約は、こうした危険から子どもを護るために、当事者の国籍を問わず、子がその常居所地から国境を越えて移動するような養子縁組が、締約国の中央当局の管理の下、国際協力によって行われるための手続を詳細に定め、条約に従った養子縁組の締約国間における承認の保障につき定めている。

中央当局制度は、2007 年の「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」(以下、「扶養料回収条約」と言う)でも採用されている。

2007 年の扶養料回収条約は、以下のような経緯で作成された。扶養義務に関して、ハーグ国際私法会議は、前記の 1956 年の子扶養準拠法条約および 1973 年の扶養準拠法一般条約のほか、これらの 2 条約の実効性を高めるために、それぞれ 1958 年の「子に対する扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約」および 1973 年「扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約」を作成したが、扶養料の回収に関する条約は作成していなかった。その理由は、扶養料の回収については、子扶養準拠法条約と同じ時代背景の下に、1956 年に国際連合により「外国における扶養料の回収に関する条約」(以下、「国連条約」と言う)が、採択されたことにある。国連条約は、扶養権利者と扶養義務者が異なる国に居住している場合の扶養権利者による扶養料の回収を、締約国間の行政協力により容易にする仕組みを作っている。

しかし、上記の 4 つのハーグ条約および 1956 年の国連条約は、それぞれ単独では子の扶養を受ける権利の保障には十分ではない等の理由から、これらの条約を包括した新しい条約の作成が要請された。これを受けて作成されたのが、2007 年の扶養料回収条約および 2007 年議定書である。同条約は、扶養料回収を求める申立人にさまざまな便宜を与えるために、締約国の中央当局が果たすべき多様な任務について詳細に規定している。

子のよりよい保護のために

以上、きわめて大雑把に検討したところからも理解されるように、第 2 次世界大 戦後、ハーグ国際私法会議は、その時々の国際社会の要請に応えて、家族の国際化 のなかに置かれた子のよりよい保護のために、新たな条約の作成、あるいは既存の 条約改正のための努力を重ねてきている。その努力は、今後ますます加速すること が予想される家族の国際化のなかで、引き続き必要とされるであろう。

とりい・じゅんこ 成城大学名誉教授/元法制審議会会長

国際問題 No. 607(2011 年 12 月)● 4

12年前

外務省:ハーグ条約中央当局の在り方に関するパブコメの取りまとめ結果について

「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」(ハーグ条約)を実施するための中央当局の在り方に関する意見募集の取りまとめ結果について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/pubcome_kg.html

平成23年11月24日

1.経緯

近年増加している国際結婚の破綻等により影響を受けている子の利益を保護する必要があるとの認識の下,政府は,5月20日付の閣議了解において,「ハーグ条約について,締結に向けた準備を進めることを決定。

今回,パブリックコメントの形で意見募集に付した内容は,ハーグ条約に関する関係閣僚会議における了解事項等及びこれまでに開催された計2回の「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」での議論を踏まえ,中央当局部分の法案の作成に向け論点を整理したもの。

2.取りまとめ結果

  1. (1)意見募集期間:平成23年9月30日~10月31日
  2. (2)意見募集総数:168件(団体20件,個人148件)
  3. (3)意見の主な内容は以下のとおり。

第1 中央当局の指定

〈賛否両論あり〉

  • 法務省が中央当局となるべきであるとの意見もあった。

第2 子の返還に関する援助

1.返還援助申請

〈賛成意見のみ〉

2.返還援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合

〈賛成意見のみ〉

3.子の返還に関する援助の実施

〈賛成意見のみ〉

4.国内における子の所在の確知

〈賛否両論あり〉

  • 個人情報の提供の義務や子の所在特定のための手段については,DV被害者への配慮や個人情報の過度な流出の防止の観点から,提供すべき情報の範囲は明確にすべきとの慎重な意見があった一方,子の所在特定は中央当局に課せられた重大な任務であるとして支持する意見もあった。
  • 中央当局へ集約された子の情報については,原則として例外事由を設けず,申請者及び相手国中央当局には提供すべきでないとの意見もあった。
5.子に対する更なる害又は利害関係者に対する不利益の防止

〈賛否両論あり〉

  • 子の再連れ去りを防止する観点から,中央当局が旅券の一時保管や新規発給を制限すべきであるとの意見や,出国禁止等の立法的措置を講じるべきであるとの意見があった一方,海外渡航の自由(憲法第22条)との関係で慎重な意見もあった。
6.子の任意の返還又は問題の友好的解決

〈賛成意見のみ〉

  • 裁判外紛争解決手続機関における調停手続を創設し,積極的に運用すべきとの意見や,外務省内に専門家チームを設置して対応すべきとの意見があった一方,外務省は司法機関ではないので,役割を限定し,既存の手続の紹介に留めるべきとの意見もあった。
7.子の社会的背景に関する情報の交換

〈賛成意見のみ〉

  • 条約の趣旨を実現するために必要な権限であるとしつつ,情報の提供は,裁判所からの求めがある場合に限定すべきである,情報の範囲や情報の提供依頼先が無限定に広がらないよう限定的に運用すべきである等の意見があった。
8.子の返還を得るための司法上の手続の開始についての便宜の供与

〈意見なし〉

9.法律に関する援助及び助言の提供についての便宜の供与

〈賛成意見のみ〉

  • 中央当局は,我が国及び締約国の法制度(特に親権,児童虐待,DV等)に関する情報提供,専門的な弁護士リスト等の提供を行うべきであるとの意見があった。
10.子の安全な返還の確保

〈賛成意見のみ〉

  • 子の常居所地国の中央当局及び在外公館と連携することが重要であり,特にDV事案への十分なケアが必要との意見があった。

第3 子との接触に関する援助

1.接触援助申請

〈賛否両論あり〉

  • 返還援助申請の場合に準じた取り扱いとすべきとの意見があった一方,条約締結後の不法な移動のみを対象とすべしとの意見もあった。
2.接触援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合

〈賛成意見のみ〉

3.子との接触に関する援助の実施

〈賛否両論あり〉

  • 中央当局は,子の最善の利益の観点から,条約締結前に連れ去り又は留置があった事案についても,できる限り支援をすべきとの意見があった一方,子との接触に関する援助の範囲や具体的措置については,子の所在の確知及び友好的解決の促進にのみ留めるべき,子の社会的背景に関する情報の交換を支援の範囲に含めるべきでない等の意見があった。
  • 中央当局が国内の既存の面会交流の制度を紹介できるよう,また,充実した面会交流が可能となるよう制度を整備すべきとの意見があった一方,中央当局は司法機関ではないので,活動は限定すべきとの意見もあった。

第4 不服申立ての制限

〈一般的な意見のみ〉

  • 申請が却下された場合には,行政不服審査法上の不服審査の申立て,又はそれに準じた手続を認め,他方でTPの人権を直接制限するような手段については不服審査の申立てを認めるべきとの意見があった。

第5 その他

  • 邦人の支援体制(DV・児童虐待等への対応を含む)を強化すべき,在外公館で受けた被害者による相談や連絡内容が国内における裁判所からの照会に応えられるようにすべきとの意見があった。
  • 中央当局が返還裁判等の事例の実態調査をする制度を国内法の中で定めるべきとする意見があった。
  • 不法な子の連れ去りの罰則化,共同親権の制度化,面会交流制度の改善といった既存の国内法制度の改正の必要性につき指摘があった。
  • DV及び虐待被害を懸念し,女性の安全の確保,子の意見を尊重する仕組みが必要であるとの意見がある一方,現在の制度では,DVが容易に認定され易く,冤罪が増加傾向にあることにも留意すべきとの意見があった。
  • 我が国がハーグ条約を締結することへの賛否両論があった。
  • ハーグ条約を実施するために同条約の目的と精神を認識した法律を制定し,不法に連れ去り又は留置された子の常居所地国への速やかな返還を促進し,他の条約締結国の法律に基づく監護の権利及び接触の権利を効果的に保護するよう促すとの意見があった。

(注:なお,法務省が行った「ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備に関する中間とりまとめ案についての意見募集」に寄せられた意見には,外務省に寄せられた上記内容と同様の趣旨の意見もあった。)

12年前

日経:娘を元夫に戻す条件で 長女「連れ去り」邦人女性、米で司法取引が成立

長女「連れ去り」邦人女性、米で司法取引が成立
娘を元夫に戻す条件で

2011/11/23 12:17

 【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)=共同】米国在住のニカラグア国籍の元夫(39)に無断で米国から長女(9)を日本へ連れ去ったとして、親権妨害罪などに問われた兵庫県宝塚市の日本人女性(43)の公判が22日、米ウィスコンシン州の裁判所で開かれ、女性が長女を米国の元夫の元に戻すことを条件に、重い刑を科さない司法取引が正式に成立した。

 法廷で裁判官から「全て理解しましたか」と問われた女性は、英語で「はい」と答えた。

 女性や元夫の弁護士によると、親権妨害罪は有罪になれば禁錮10年以上の重罪。司法取引は、長女を30日以内に米国に戻すなどすれば、女性の有罪、無罪を当面は決めずに、3年後に軽罪扱いとする内容。長女が米国に戻った後、女性の拘束が解かれる可能性が高いという。女性は米国永住権を持っており、今後は長女と面会しながら米国で暮らす考え。

 国際結婚が破綻した後の子どもの法的扱いを定めた「ハーグ条約」は、無断で子どもを国外へ連れ出された側が求めれば、相手国が子どもを元の在住国に戻すよう義務付けているが、日本は未加盟。日本政府は加盟に向け、必要な関連法整備を進める方針を決めている。

 元夫の支援団体は、同様のケースで母親らが日本に連れて帰った子どもは300人以上としている。

 元夫は閉廷後「元妻を刑事裁判にかけるのは胸が痛む。子どもも心の傷を負い、誰にとってもマイナスだ」と述べ、日本政府にハーグ条約加盟を急ぐよう求めた。

12年前

産経:国際離婚の闇…子供“連れ去り”兵庫の女性が米国で身柄拘束されたワケ

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2011.11.13 20:00

米国で離婚訴訟中に子供を連れ去ったとして、兵庫県の女性が米司法当局に身柄を拘束され、親権妨害などの罪で刑事裁判を受けている。国際結婚が破綻した夫婦の親権トラブルは解決が難しく、数年前からは国際問題にも発展していたが、刑事訴追されるのは異例。事態が深刻化する背景には、日本と欧米の親権制度の違いがある。(加納裕子)

親権はどちらに?日米で割れた判断

当事者は、日本人女性(43)とニカラグア出身の男性(39)。長女(9)の親権をめぐる訴訟は、日米両国で約4年前から続いていた。

双方の代理人弁護士などによると、2人は2002年、米ウィスコンシン州で結婚し、同年長女が誕生。長女は日本、ニカラグア、米国の国籍を持つ。しかし2人は不和になり、2008年2月、男性は同州裁判所に離婚訴訟を起こした。

女性は直後に長女を連れて日本に帰国。2009年6月、判決は男性に単独親権を与え、女性が直ちに長女を男性に引き渡すことを命じるとともに女性に法廷侮辱罪が成立すると宣告し、同年9月に確定した。

一方、女性は同年3月、神戸家裁伊丹支部に離婚訴訟を提起。米国の判決を受けて6月、親権の変更を申し立てた。

今年3月、家裁支部は「子供が日本になじんでいる」として女性の単独親権を認める一方、男性と子供を日本で約2週間、米国で約30日間面会させるよう命じ、ウェブカメラで週1時間、電話で週30分間の交流も義務づけた。双方が大阪高裁に抗告している。

女性が米国で身柄を拘束されたのは、その直後の4月。代理人弁護士によると、女性は永住権(グリーンカード)更新のため、ハワイに渡航したという。

長女は現在、兵庫県内で親族に育てられている。関係者によると、米司法当局は親権妨害の事実を認めて長女を男性に引き渡せば刑期を短くできると提案したが、女性は拒否。「帰国した時点では男性に離婚訴訟を起こされていたことを知らなかった。親権妨害にはあたらない」として無罪を主張するとともに、「子供を引き渡すつもりはない」と訴えている。

「子供連れて実家に」が犯罪に…

厚生労働省の人口動態調査によると、昨年の国際結婚は約3万件。一方、国際離婚も約1万9千件にのぼり、国際結婚が破綻、子供を連れて帰国という選択は特異とはいえない。

しかし、もう片方の親の同意がなかった場合、日本と欧米の家族観の違いが、その後、重大な結果を引き起こすことになる。

日本の法制度は離婚後、どちらか一方が親権を持つ「単独親権」で、子供が幼ければ母親が親権者になることが多い。母親が子供を連れて無断で実家に帰ったとしても、刑事罰に問われることは珍しい。

一方、欧米では離婚しても双方が親権を持ち、子供にかかわり続ける「共同親権」が一般的。勝手に子供を海外に連れ去れば重大な親権妨害とみなされ、容疑者として指名手配されてしまうのだ。

外務省によると、各国政府から、日本人による子供の“連れ去り”が指摘されたケースは約200件。このうち約半数の100件は米国政府からだという。

ハーグ条約加盟は是か非か

こうした事態に歯止めをかけようと、米国などは日本に対し、親権トラブル解決の国際ルールを定めたハーグ条約(正式名称「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」)への早期加盟を強く求め続けてきた。

ハーグ条約では、国際結婚が破綻し、一方の親が無断で国外へ連れ去った子供(16歳未満)に関し、連れ去り先の国の裁判所が返還するか否かを判断。その上で、元の居住国で親権争いを決着させる手続きを定めている。1983年に発効、これまでに欧米を中心に約85カ国が加わり、日本も今年5月に加盟の方針を表明した。

外国籍の元配偶者に子供を連れ帰られてしまった日本人の親には国際ルールに沿った解決の道が開けたといえるが、反対意見も根強い。ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待から子供とともに逃れてきたケースでも連れ戻される危険があるというのが主な理由だ。

今回、米国で身柄を拘束された女性も、DVの被害を主張していた。女性が日本に帰国する約2週間前、男性が女性に暴力をふるって約2週間のけがを負わせたとして、傷害罪で逮捕されるトラブルがあったという。

男性は不起訴となっており、一連の訴訟でもDVはなかったと訴えている。今年3月の神戸家裁伊丹支部の決定では、DVは認定されていない。

ハーグ条約では、DVや虐待など子供に重大な危険が及ぶ場合は子供の返還を拒否できることになっているが、双方の言い分が食い違う場合、特に海外での事実関係を判断するのは難しいのが実情だ。

返還、面会交流…正念場迎える国内法整備

日本がハーグ条約に加盟した場合、相手国に子供の返還請求を受けてから原則として6週間以内に返還手続きを行わなければならない。また、返還だけでなく面会交流の請求についても、適切な対応が求められる。

こうした手続きには国内法の整備が不可欠で、現在、外務省と法務省が検討している。DVなどを理由にした返還拒否規定をどこまで盛り込めるかに加え、日本でこれまで強制力が弱かった面会交流権をどのように確保するかが焦点となっている。

拒否の理由を広く認めて返還拒否が相次いだり、共同親権の国では当然の権利とされる面会交流が有名無実化すれば、どうなるのか。大阪女学院大学の西井正弘教授(国際法)は、「米国は、ハーグ条約に加盟しながら条約を守らない国を非難している。日本が加盟後、条約を守っていないと判断されれば、政治・経済的な圧力を受ける可能性がある」といい、「国内法の整備や運用に誤りが生じれば、さらなる軋轢(あつれき)を生みかねない」と指摘する。

早稲田大法学学術院の棚村政行教授(家族法)は「国際協力の促進と日本国内の事情を調和させながら、子供の幸せのために必要な社会的支援や法制度の整備を行うことが必要だ。日本と欧米では犯罪の成否や親権制度、法文化に大きな違いがあるため、今回のケースのように日米で極端な結果の相違がでてくる。離婚後の親子関係がどうあるべきなのかという本質的な議論を国内でもっとすべきではないか」と話す。

今回のように激しい親権争いの末に親が海外で拘束され、子供が取り残されるような事態は決して望ましくはない。子供の幸せをどうすれば守れるのか、今回の事件が突きつけた課題は重い。

12年前

共同親権運動ネットワーク(kネット)メールニュースNo.59「子どもと誕生日を祝おうとすると逮捕される日本」

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12年前

毎日JP:<日米首脳会談>関係修復に「四つの宿題」(一つはハーグ条約) ホノルルで12日

野田佳彦首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開かれるハワイのホノルルで12日昼(日本時間13日午前)にオバマ米大統領と会談する。首相は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加を大統領に伝えたい考えだが、10日を目指していた参加表明の記者会見は11日に先送り。米軍普天間飛行場の移設問題で揺らいだ日米関係の修復をアピールするはずが、政府・与党の対米姿勢が固まっていないことを露呈する形になっている。

日米首脳会談は9月のニューヨーク以来で、野田首相の就任後は2回目。山口壮副外相は10日の記者会見で、今回の会談について「普天間、TPP、牛肉、ハーグ条約という四つの宿題がある。進展があるもの、若干難しいものがあるが、それぞれについて意見交換する」と説明した。

普天間問題では10月中旬に一川保夫防衛相と玄葉光一郎外相が相次いで沖縄を訪問。同県名護市辺野古に移設する環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する方針を表明しており、首相はこうした取り組みを大統領に伝えて移設への積極姿勢を示したい意向だ。

米国産牛肉の輸入制限緩和は前回の首脳会談で大統領から進展を求められた課題。日本政府は月齢20カ月以下に限る輸入条件を30カ月以下まで広げる案を軸に検討しており、首相はこうした国内手続きを進めていることを説明し理解を求める。

米側は国際結婚が破綻した夫婦間の16歳未満の子どもの扱いを定めたハーグ条約について加盟を急ぐよう求めており、首相は加盟に向けた条約承認案と関連法案を来年の通常国会に提出する方針を説明する。ただ、TPP交渉参加を明確に伝えられない状況になれば、首脳会談で確認する「同盟深化」も中途半端な印象を与えかねない。【坂口裕彦】

12年前

「ハーグ条約」パブコメに、米国やカナダなど6カ国が共同で意見書

http://www.usfl.com/Daily/News/11/11/1108_010.asp?id=91872

ハーグ条約加盟で意見書 米など6カ国が日本に
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟をめぐる日本政府のパブリックコメント(意見公募)に、米国やカナダなど6カ国の政府が共同で子どもを連れ出した側に有利にならないよう国内法整備を求める意見書を出していたことが8日、分かった。政府関係者が明らかにした。

意見公募で外国政府が見解表明するのは極めて異例で、日本の加盟に対する関心の高さをうかがわせる。

他は英国、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国。法務、外務両省が関連法案の中間案をまとめたのを受け、両省が9月末から1カ月間実施した意見公募に、在京のカナダ大使館が代表して提出した。(共同)

12年前

産経ニュース:【金曜討論】「ハーグ条約」 大谷美紀子氏、大貫憲介氏

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111104/trl11110408110000-n1.htm

【金曜討論】

 

「ハーグ条約」 大谷美紀子氏、大貫憲介氏

 

2011.11.4 08:10
 国際結婚が破綻した夫婦の子供について、一方の親の承認がない出国を認めず、子供を元の居住国に戻すことを定めたハーグ条約。日本政府は今年5月に加盟方針を決め、国内法整備に向けた作業を進めているが、日本と欧米の親権制度が違うことなどから慎重論も強い。「国際的ルールの中で解決するしかない」として加盟に賛成する大谷美紀子弁護士と、「子の福祉という観点が抜け落ちている」と反対する大貫憲介弁護士に意見を聞いた。(磨井慎吾)

≪大谷美紀子氏≫

■国際的ルールの中で解決を

--なぜ加盟が必要なのか

「もともと米国やフランスなどでは、片方の親が子供を一方的に連れて帰ることは国内法で禁じられた犯罪にあたる。しかし日本はこれまで、日本国内では犯罪でないのだから返す必要はないという対応を続けてきて、数年前から国際問題化していた。このまま非加盟を続けるのは、子供を連れて帰ってこいと言っているようなもので、何の解決にもならない。今と比べて厳しい形にはなるかもしれないが、早く一定のルールに参加して、その中でどう邦人を守っていくかを考えないといけない」

○非加盟でも守れない

--自国民保護の観点から批判もある

「ハーグ条約に加盟しなければ国際離婚した邦人が守られるというわけではなく、中途半端な状況に置かれ続けるだけだ。今後もこの問題は発生し続ける。国際離婚問題で弁護士が相談を受けたとき、日本はハーグ条約に入っていないから子供を連れて帰ってきなさい、と言うのが果たしてよい解決なのか。国際結婚は相手があるわけで、日本のルールだけでは決まらない。国際結婚が当然持つリスクについて、今まであまりにも軽く見られすぎていた」

--家庭内暴力(DV)など、やむを得ない理由もあるのでは

「たしかに当事者にはDVなど、帰ってくる事情があったのだろう。連れ帰ったことで国際指名手配されて、もう日本国外には出ないという選択も、決めたのが本人ならそれでいい。しかし、連れて来られた子供はどうなのか。たとえば日本人と米国人の間に生まれた子供で、日米二重国籍となっている場合は、米国で教育を受ける道もある。日本に連れ帰ってしまうと、そうした可能性を親の都合で摘み取ることになる」

○日本側の認識甘い

--日本と欧米とで、親権に関して考え方の違いがあるのでは

「日本の法文化は、親権に関する考え方がかなり緩い。日本では片方の親が子供を連れて家から出ていっても、あまり問題視されない場合が多いが、米国のようにその行為をはっきり犯罪とみなす国もあり、内外の認識差が大きい。中には米国の裁判所の命令を無視して逃げ帰った例もあるわけで、米国からすると、日本が犯罪者をかくまっているようにも映る」

--未加盟で解決は無理なのか

「加盟しなくてもいいという人は、対案を出してほしい。この問題で最強硬派の米国はエスカレートする一方で、北朝鮮による拉致問題での非協力や、犯罪者引き渡し手続き適用などの手段に訴える可能性もある。外圧に屈しろと言っているわけではないが、交渉としてみた場合、非加盟のままで妥結点を設定できるのか疑問だ」

≪大貫憲介氏≫

■「子の福祉」の観点置き去り

--条約加盟の何が問題か

「ハーグ条約の根本的な問題は、“子の福祉”を考えていない点だ。一方の親による子供の連れ去りというが、弁護士としての実務的な経験からみると、配偶者による児童虐待や家庭内暴力(DV)を理由に、やむなく国境を越えて逃げてくる事例が多い。返すべき事案とそうでない事案があるのに、ハーグ条約は原則的に子供を元の居住国に返すことを定めているため、そうしたケース・バイ・ケースの審議がなされない」

●「返還ありき」不適切

--具体的にはどんな事例が?

「これは外国の事例だが、虐待を受けた子供をハーグ条約に従って元の国に返還したところ、虐待者である父の家に返すわけにはいかないので、結局、児童保護施設に収容されたケースがあった。子の福祉という観点で、これが望ましい結果だと言えるだろうか。離婚後の親権問題の本質は、どちらが子供を育てることがより子供の幸福に合致しているか、ということのはずなのに、まず返還ありきというのは適切ではない」

--加盟を前にした法律案では、返還拒否を可能にする条文の盛り込みも検討されているが

「返還拒否事由について、今、法律案として出てきているものを見ると、あまりにも厳しすぎる。9月に出た法務省中間案を読むと、過去に暴力を受けたことがあるだけでは不十分で、“返還した場合、子がさらなる暴力等を受ける明らかなおそれがあること”を本人が立証しなければならない。実際には機能しない可能性が高い」

--非加盟なら、“連れ去り”の被害はどうするのか

「ハーグ条約に加盟しなければ日本から連れ去られた子供が返してもらえない、という話は実はウソで、私自身が弁護士として子供を返還してもらった案件が今年だけでも2件ある。また日本にも子供の返還を求める審判申し立てなどの法制度はあるのに、外国人から活用されていないのが問題だ」

●外圧で曲げるな

--条約に加盟しない日本は、国際的に批判を浴びている

「国際的といっても、“連れ去りは正義に反する”という考えが特に強いのは米国で、今回突出して日本に圧力をかけているのも米国だ。だが、日本には日本の社会に沿って形成された法文化というものがある。ハーグ条約加盟で、必然的に面会交流も欧米流になっていくだろう。日本では離婚時に父母のどちらが親権を持つかを決めるが、欧米では離婚後も共同親権だ。つまり、新しい家庭を持った後でも、別れた夫もしくは妻が子供と頻繁に会って、子育てに干渉してくるわけだが、それに日本人が耐えられるのか。慎重に考えなくてはならない問題だ」

12年前

琉球新報:「返還手続き那覇でも」 ハーグ条約批准・中間取りまとめ

国際結婚が破綻した場合、一方の親が子どもを連れて母国に帰るケースに対し、もともと両親と住んでいた国に子どもを戻すことを定めたハーグ条約について、国は批准する方向で検討しているが、法務省はこのほど同条約の子の返還手続きに関する中間取りまとめを発表した。
ハーグ条約では、夫婦間の暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)で、暴力を振るわれた女性側が子どもを連れて日本に帰国した場合の子どもの取り扱いが注目されているが、中間取りまとめでは、子どもの返還拒否が認められるのは(1)申し立てが子の連れ去りから1年を経過した後にされたとき(2)子を返還することで子に対し身体的・精神的な害(暴力等)を及ぼす重大な危険性があること―など、その他複数の案が検討されている。管轄する家庭裁判所は(1)東京(2)東京と大阪(3)東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8カ所―の3案が挙がっている。
同条約施行に当たり、法務省は返還手続きに関する法的整備を、外務省は諸外国との調整・連絡役としての役割について取りまとめており、両省はともに10月末まで国民から意見を募集している。
NPO団体・女性フォーラム沖縄や大学教授、弁護士らで構成する有志のグループは、この中間取りまとめに対し意見書を24日、連名で法務省民事局に電子メールで提出した。同意見書では「子の返還を求める手続きを行う裁判所を、那覇家庭裁判所にも認めてほしい」と要望している。
意見書を提出したメンバーの一人、沖縄国際大学の熊谷久世教授は「米軍基地が集中している沖縄は国際結婚や相談事例が多いため、地元でも裁判できるよう検討が必要」と指摘。法務省は法制審議会でまとめたものを、来年2月には法務大臣に答申し、次期国会で審議に入る予定。

最終更新:10月28日(金)10時25分

12年前